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2005/06/07

ケータイの奪いしもの

母親がちょくちょく来ては、文庫本を置いていってくれているようだ。ようだ、というのは私自身は顔を合わせていないのだ。

母親は私と違って社交的で、知り合いが多い。その知り合いの一人から古い本をもらって読んでいるそうだ。他人さんが選んだものだから、私だったら決して本屋で手に取ることのない本があって、新鮮である。池波正太郎の鬼平犯科帳や剣客商売のシリーズが面白いことを、この母ちゃん文庫で知った。

その母ちゃん文庫の中に、「寝台特急八分停車」というのを見つけた。西村京太郎である。小学生の頃、鉄道ブームを経験した私には、そのタイトルが非常に懐かしく思えた。「寝台特急」の部分に「ブルートレイン」とルビが打ってある。

読んでみると、非常にほほえましい箇所が出てくる。ある寝台特急に乗車した刑事が、先行の寝台特急と連絡をとりたいと思う。自分が下車することはできない。そこで、停車した駅でメモを助役に渡して、その駅から先行列車が次に止まる駅に電話してもらい、メモの内容を伝えてもらう、と手の込んだことを考える。他にも同様の行為が出てくるのだが、今なら携帯電話で話はおしまい。西村京太郎が頭を悩ますことも、腕を振るうこともできない。

単行本が最初に出たのが、昭和六十一年とあるから、1986年である。ランディ・バースが史上最高打率 .389 を記録し、二年連続の三冠王を獲得した年だ。阪神はバース以外、前年の優勝の勢いがなかったが、時代はバブルへ突き進んでいた。話はそれるが、バースがブレイクする前を覚えている。そもそも、本名は Bass である。来日決定当初 バス と紹介されたが、阪神の外人選手がイマイチな時代だったので、スポーツ紙でからかわれ、登録名は バース となった。最初の年は年俸も安く、何と打率が3割を切っていた。あのバースが・・・。さらに驚くべきことは、ホンダのシビックに乗っていたことだ。あの巨体が・・・。もう身体がはみだすんじゃないかと思った。

閑話休題。1986年。バブルは進行していたが、まだ携帯電話は普及していなかった。恐らく、存在はしていたはずだ。パソコンのキャリーバッグほどの大きさで、長いアンテナがついたでっかい箱を肩から提げている人を見たことがあった。あれが当時の携帯電話だったはずだ。でも、見かけたら友人に自慢げに話していたほどだ。一般では、せいぜい、ちょっとした企業の重役が、月数万円の費用を経費で落として、自動車電話を利用していた程度だろう。隔世の感。

私はケータイをほとんど利用しない。持っている機種は2、3年前のもの。まだ J-PHONE と書いてある。だが、一度充電すると、一週間ぐらいはもつ。今回はたぶん10日ぐらいもっている。今、累積通話料金を確認してみると 646 円。ほとんど、着信専用だから。私のは 携帯電話 というよりは メール着信機 といった趣。

星新一の作品が今でも新しいファンを獲得し続けている理由の一つに、色あせないようにするための工夫があるという。たとえば、貨幣価値。現段階で100万円が結構な金額でも、20年後も同じだとは限らない。そこで「大金」としておく。たとえば、科学技術。何が進歩し、なくなるのか予想がつかないから、そういうものはできるだけ作品に登場させない。
う~ん。 先達はあらまほしきことなり

逆に、当時の最先端の技術を書いているために、後で読むと、このころはこういう時代だったなと思い出されて面白いということも言える。やや倒錯した感覚だが。村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」を今読んでみると、結構面白いと思う。
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