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2007/06/25

太宰を読んだのはいつ以来だろう?

太宰治は好きですが、熱狂的というわけではありません。

以前の勤め先の後輩に太宰の崇拝者がいて、休みにわざわざ津軽半島に出かけたり、社員旅行で、ゆかりの地の近くに行ったときは、他の社員と離れその地を訪れるほどでした。しかも、そういう男が2人もいました。

その2人は、ともに背が高く、痩身で、見るからに繊細そう。地方の中流以上の家の出で、大学は東京の一流大学でした。2人とも太宰との共通点があふれるほどありました。

それに対し、中背で腹が出かけており、あつかましい僕は太宰に心酔することはありませんでしたが、好悪で言えば、間違いなく好きの方で、それも高い度合いです。

ただし、作品を読んで内容を理解して好きになったわけではないでしょう。何しろ、太宰を読んだのは、たぶん中学か高校の時で、それもせいぜい、『走れメロス』、『人間失格』、『グッド・バイ』あたりでしょうから。

文学史で「無頼派」の一人だと知ったために好きになったに違いありません。実際、坂口安吾も好きです。僕の中にある無頼派的傾向だけが、太宰との共通点と言えば、言えるかもしれません。もちろん、スケールはゾウとアリほどに違い、僕のほうは”傾向”だけで、ホンモノではありませんが。

(例によって、まくらが長くなり過ぎましたが、ここからが本題です。)

この前の父の日に、太宰の本を2冊もらい、そのうちの『津軽』をまず読みました。

すばらしい。

旧家の四男か五男かともかく兄弟の下の方で生まれ、その圧力から逃れ続けようとし、最後には愛人と入水自殺してしまうまで、常に暗い陰をひきずっているというイメージがありましたが、違うんですね。

30代半ば、出版社より故郷の津軽風土記の執筆を頼まれ、戦争末期の昭和19年(1944年)に1か月足らずの間、津軽を旅行したあとに生まれたのが本書です。

重苦しい空気を感じる実家には足が遠のいていたため、久々に帰る故郷で多くの人と再会します。唯一の友人「N君」や、かつての使用人「T君」、子どもの頃の子守役だった「たけ」たちです。

前半は、戦時中で簡単には手に入らないはずの酒を飲む場面が多く出てきます。友人たちや津軽への愛情が、時にユーモラスに、時に驚くほど素直に書かれています。

最高に良かったのは、子守役「たけ」との再会です。巻末にあります。未読の方のために詳述は避けますが、自信を持って万人に薦めることのできるシーンです。太宰のアニマ形成には、実母よりも「たけ」が大きく関わったように思われます。

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